人の心を、自分の思うように変えることができたら、なんて ―――― 人は誰しも、1度は思うことでしょう。

 

 例えば、大好きなあの人と両想いになれたら、とか。苦手なあの人をどうにかできないか、とか。そんな“魔法”があれば、と。

 

 そういった効力を持つ “おまじない”だとか“お守り”だとか、或いは“魔術”だとか、そういうものは確かにこの世にたくさんありますし、方法もいろいろ知っています。

 

 

 けれど僕は、それらを実際に使おうとは思ったことはないんです。

 

 本当ですよ。

 だって、それじゃあつまらないじゃないですか。

 

 

 ねぇ ―――― 伊藤くん?

 

 

 

 【 Magic of Love 】 

 

 

 

 ―――― 七条さんの部屋には、いつも気になるものがある。

 

 もう何度入ったか知れないその部屋の中で、定位置のクッションの上にちょこんと座っている啓太は、今日も一点に目を奪われていた。
 機器類など無機質な金属製品がやたら多いこの部屋の中で、多分唯一の有機物と言っていいであろう、木製の本棚。

 そこには、コンピュータの専門書から洋書、占いに関する本、紅茶やお菓子に関するムックなど、実に多種多様の書籍が並んでいる。もちろん背表紙しか見えないが、それだけで興味をそそられるものもあれば、かなり難しそうだなと敬遠してしまうものもある。

 けれど、やっぱり啓太の一番気になる本は、というと。

 

 

 ―――― 『悪魔の呪法全書』って ‥‥‥ 一体何するつもりですか七条さん?

 

 

 

 いつも『それ』は本棚の同じ場所にあって、啓太が勉強を教えてもらったり一緒にお菓子を食べたりする時に座るテーブルの定位置からだと、イヤでも視界に入る。
 その強烈なタイトルもさることながら、年季の入っているのか熟読している証拠なのか、他の本に比べてかなりカバーの端がボソボソになっていて、それが余計に不気味さを演出していた。

 あまり気にしちゃいけないと努めて意識を別のところに遣ってみても、やっぱり気になるものは気になってしまう。

 そりゃあもう、いろんな意味で。

 

 そんなもの誰に施すんですか、とか。

 やっぱり某生徒会副会長ですか、とか。

 一体どんな効果を狙ってるんですか、とか。

 いくら何でも命までは取りませんよね、とか。

 

 それより、隣にちょこんと並んでいる『白魔術全書 亜細亜篇』ってのも、なにげに気になってみたり。

(白魔術まで、するんですか? なんか微妙に、想像できない ‥‥‥)

 

 と、いろいろ考えていたものだから。

「伊藤くん」

 

 そう呼びかけられるまで、彼がパソコンから離れたのに気付かなかった。

「ボーっとしていましたね、大丈夫ですか?」

 不意に降りてきた優しい声に振り向くと、紅茶の香を漂わせたティーカップを二つのせたお盆を手に、七条がこちらに微笑んでいる。

「あ、はい。平気です」

「それならいいんですが ‥‥‥」

 啓太が答えてもやや心配げに、少し苦く笑いながら。七条はテーブルの上にペアのカップを置いた。

 

「今日は少し、仕事が立て込んでしまいましたから」

 どうやら、啓太がぼんやりしているのは疲労からだと思っているらしい。七条は隣に腰掛けると、労わる様に優しく啓太の頬の辺りに手を添えた。
 実際、彼の言うとおり、少し疲れているのかも知れない。確かに今日は、いつも以上に忙しかったから。

 

 

 

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 学園MVP戦が終わってから、放課後は会計機構の手伝いに行くのが啓太の日課となっていた。今ではすっかり慣れてきて作業内容も覚え、この仕事自体もやりがいがあって楽しいと思うようになった。

 中途半端が好きではない西園寺からは「いっそ正式に会計機構へ入らないか」という誘いを再三受けているし、王様こと丹羽会長からは既にもう問答無用に仕事を与えられている。しかしながら啓太は、どちらにも所属せずにいた。いろいろなことを考えた結果、中庸を保っている今のこの状態がベストだと思ったのだ。

 大体、会計室によく顔を出すのは「七条に会う」「七条と一緒にいるため」という、個人的で不純な動機からだ。手伝いたい気持ちも勿論あるが、一番の目的は七条だといっていい。そんな私情いっぱいの理由で会計機構に入るのは、何だか申し訳ない。

 けれど最大の、決定的な理由は ―――― 『生徒会』と『会計機構』という対立したこの2つの機関の間では、中立の立場にいた方が自分は何かと役に立つことが多い、ということを啓太自身が自覚しているからだ。

 

 もちろん、七条の恋人という時点で、完全な中立という訳にはいかない。
 しかしそれでも、生徒会と会計機構のどちらにも信頼されている啓太は、クッション材なりパイプ役なりになれる。そしてそれが、双方が円滑に作業を進めるのには一番いいということも、みんな分かっているのだ。だから前述のあの西園寺ですら、七条というキーマンを抱えているにもかかわらず、未だ強引に自分のところに引き込むことができずにいる。

 別段何かの技術に秀でている訳ではなく、もともとそんなに要領がいい方でもない。なのについ、どちらの仕事も断れずいっぺんに請け負ってしまうことが多々ある。そんな、けっこうお人好しな性格を啓太はしている。
 だが、責任感はあるし秘密はちゃんと守るので、その点では意外と信用もされているのだ。

 仕事の可能不可能は、内容をよく吟味して無理をさせない程度にと、頼む側が考えてやればいい。その点はさすが、丹羽などはしっかりしていた。

 

 

 とはいえ、今日は少し差し迫った仕事が重なってしまった。
 原因は最早言うまでもないのだが、敢えて犯人の弁明の台詞を借りるならば、「生徒会室に行く道すがら、柔道同好会の連中が勝負を挑んできたんだよ。今回も徹底的に打ち負かしてやったってーのに、アイツ等しつこくってなぁ」 ――――

 確かに彼らを野放しにしておくことは良くないし、丹羽以外に彼らを止められる者はいない。けれど、彼が生徒会における書類の最終議決権を持っている以上、彼がいないと生徒会では話が一向に進まない。今日も、その彼の一連の行動によって生徒会の事務が随分と滞ってしまったのは事実、決して褒められたものではない。

 ここで普段なら「生徒会の怠慢だ」だの「会計機構は暇だ」だの生徒会副会長と会計機構補佐の嫌味合戦で横道にそれるところだが、啓太が「そんなことをしている場合ではない」と仲立ちして事なきを得たのだけれど。

 そんなこんなで書類の完成が大幅に遅れてしまい、その処理を分担しているうちに、末端の啓太にまでけっこうな仕事量を与えることになってしまったのだ。

 

 そしてそれらの作業が終わった後、少々遅めの夕食を摂って七条の部屋にやってきた。そして分からないところを彼に助けてもらいつつ英語の課題を終え、現在に至る。

 嫌いな英語の課題が、いつも以上に難しく感じられる。勉強したのは1時間程度なのに、いつも以上にちょっとぼんやりしてしまう。確かに七条の言うとおり、軽い疲労があるのかも知れない。

 

 しかし、それも ――――

「でも、伊藤くんのおかげで助かりました。ありがとう」

 そう言って、七条はニコリ。

 こんな微笑に、啓太は弱い。照れを満面に浮かべる啓太は、「えへへ」とつられ笑い。それだけで、ちょっとした疲れなどすぐに忘れてしまう。
 いつも笑みを絶やすことがなく、時には「胡散臭い」とまで言われるいる彼だけれど、その表情すら、今では大好きだった。

 

 

 

  □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

 

 

 他愛のない話をしながら、とても幸せな時間を過ごしていると。

「そういえば、伊藤くん」

 2杯目の紅茶を口に運んだ啓太に、不意に七条が声を掛けた。

「何か気になる本があったら、遠慮なく言って下さいね。どれでもお貸ししますよ」

 

 言われて、思わず啓太は「えっ」と声をあげた。

 最初の紅茶が出てくる前 ――― かれこれ2時間ほど前になるが ――― 確かに啓太は本のことを考えてはいた。が、勉強中はもちろん、その後の雑談の間にもそんな話なんて全然出ていなかったから、そのことを考えていたことすらすっかり忘れていた啓太には、寝耳に水だった。

 何の脈絡のない話に、えーっと、と疑問符を浮かべていると。

「さっき、ずっと本棚の方を見ていたでしょう?」

 あぁそういえば、と啓太はそこでやっとぼんやり思い出した。

 すると七条は徐(おもむろ)に立ち上がり、少し考えるような仕草をしてから1冊の新書版の本を手にした。

「この本ですか?」

 そして差し出したのは、古びたカバーの本 ―――― 『悪魔の呪法全書』。

「え ‥‥‥ ええッ?」

 驚いた啓太は、思わず声をあげた。

 

 ひょいと見せられたその本の、ちょっと怖い“いかにも”な表紙のイラストにもけっこう退(ひ)いた。が、何より気になった本を当てられたのにビックリだ。

 確かに、難しそうなパソコンの専門書になどに自分が大して興味を持っていないことを七条は知っているから、何も聞かずともそれは違うと判断できるのは分かる。同様にして、洋書の類も即座に候補から消えるだろう。

 けれど、それでも。
 啓太は思案し、本棚をもう一度見渡した。

 よく見れば、他にもお菓子の本とか、啓太が興味を持ちそうな本は他にも沢山あるはずだ。なのにその中で、よりにもよって『呪術』の本だなんて。

(いやまぁ、それで正解なんだけど)

 不思議そうに瞳をパチクリさせて、傍らにいる本の持ち主の顔を見上げた。

「な ‥‥‥ 何で分かったんですか?」

そんな啓太の反応に、七条はクスクスと穏やかな笑みを零す。

「君の視線のずっと先を、見ていただけですよ」

 意外だと少々驚いたような、けれどどこか嬉しそうな目をして。
 そう、嬉しそうな。

 正解できたのが嬉しいのか、それとも ――――

「けれどまさか、本当にこの本だとは思いませんでした」

 そう言う背中に、黒い羽と尻尾が見えたような気がするのは、啓太の気のせいではないだろう。

 

「興味がありますか?」

 何だかいつも以上にちょっと軽いように聞こえる、七条の声音。対する啓太の表情は、小さく強張っていた。

 ぽん、と掌(てのひら)に置かれたままの、1冊の本。暗い色遣いに緻密な描写、何かの顔のような絵柄の表紙を見ていると、ただ触れているだけで何かの作用がありそうで怖い。

 そういえばMVP戦の前、初めて彼と学園等の外に出たときに行ったオカルトショップで、呪いの人形を勧められたことがあったことを思い出す。

「え ‥‥‥ えーっと、興味があるというか、そういうよりも ‥‥‥」

 矢庭に慌ててしまい、けれど全面否定するのも失礼だと思って、視線を泳がせながら次の言葉を捜す。でも、なかなかそれが見つからなくて。

「誰かを呪うとか ‥‥‥ してるんですか、七条さん?」

 とうとう、単刀直入に訊いてしまった。

 そんな問いに、少々勢いに押されたような顔をして。ぱちくりと瞬きの後、七条は再び微笑んで。

「ナイショです」

 言っては効き目がなくなりますから、なんて。
 尤もらしい理由で、いつものように黙秘権を行使するものだから。

 啓太はただ、本を手にしたまま絶句するしかなかった。

 

 

 

 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

 

 

「‥‥‥ そんなに怖がらないで、伊藤くん」

 心なしか青ざめた顔をして黙りこくる啓太に、さすがの七条も言いすぎたかと苦く笑う。

「大丈夫です、僕は誰も呪ってなんていません」

 

「‥‥‥」

「本当ですよ」

 

 しかし、啓太は「はぁ」と生返事をするのみ。
 七条がそう言ってすぐに信じてもらうには、彼の日頃の行いは少々悪すぎた。

 啓太とて、七条を疑いたくはない。けれど、彼に手法や道具の知識があるのは明らかだし、何といっても呪う相手に心当たりが充分ある。

 穏やかに微笑みつつそう言っている本人の目が、実は全く笑っていないのが決定打。

 

 ―――― 怖すぎますって、七条さん ‥‥‥。

 

 つつーっと、冷たい汗が啓太の背中を流れた。

 

 

「‥‥‥伊藤くん、君は何か誤解しているようですね」

 不意に、七条は瞳を伏せて息をついた。

「僕が中嶋さんに呪いをかけているんじゃないか、って思ったでしょう?」

 言って、そう思われていても仕方ないとは思っていますけれど、と苦笑する。
 一方の啓太は図星をさされてドキリとして。しかし肯
(うなず)くことはできず、かといって下手な嘘もつけずに、乾いた愛想笑いを浮かべるしかなく、ただ七条の言い分を聞いていた。

 

「確かに、あの人と僕とはとても相性が悪い」

 大体あの人の言動は、いちいち僕の神経を逆撫でする ―――― 七条は訴えた。
 考え方の全てが正反対なのは、仕方がないとして。けれど、それなら干渉してさえこなければこちらも何もしないのに、行動パターンが似ているのか事あるごとにぶつかってくる。だから目には目を、というハンムラビ法典に基づいて、こちらとしても対抗せざるを得なくなってしまうのだ、と。

「けれど僕は決して、あの人を恨んだり憎んだりしている訳ではないんですよ」

「えっ ‥‥‥」

 意外な発言に啓太が顔を上げる、と。

 

「ただ、嫌いなだけです」

 

 七条は、さらっと言ってのけるものだから。

 

「ははは ‥‥‥」

 そうでしょうねと、やはり思った通りだった応えに啓太は一気に脱力してしまった。

 

 

(それにしても ‥‥‥)

 啓太はもう一度、本の表紙に目をやった。

(本当に、効果なんてあるのかな)

 

 畏怖の念はあるものの、女の子たちの間で昔流行った“おまじない”みたいな印象が強くて、どうしても胡散臭さの方が先に立ってしまう。それを信じられるか、というと、ちょっと自信がない。

(科学的根拠のないもの、なんて言ったら、七条さん ‥‥‥ 悲しむだろうな)

 そんなことを考えつつ、不意に本を開いてみた。

 怖いもの見たさ、ということもなく、ただその偶然に開かれたページには。

 

 

『憎い相手を心臓病で殺す』

 

『相手をじわじわと呪い殺す』

 

 

 強烈な言葉が、視界に飛び込んできて。
 さすがに啓太は硬直し、ポトリと本を落としてしまった。 

 

「どうしました、伊藤くん?」

 七条はあくまで、「ふふ ‥‥‥」と静かに微笑むだけ。その静かさが、余計に怖い。

「何度も言いますが、僕は本当に何もしていませんよ?」

 表情も声音も穏やかなのに、どうしてこう ―――― 啓太は平静を取り戻そうと必死だった。
 

「もし憎しみや怨みがあるなら、僕はとうの昔にあの人を呪い殺しています」

 呪殺というのは、一種の完全犯罪です ―――― 行為とその結果の因果関係を科学的に実証するのが不可能に近いために、法で裁くのは非常に難しいですから。

 いつものことだが、七条は人畜無害な顔をして、恐ろしいことを言う。
 それも、嘘か本当か分からないような、説得力のある冗談を。
 否、本気かも知れない。

 それが計り知れないから、ドキドキしてしまう。

 

「それに、『人を呪わば穴二つ』と言うでしょう」

 『呪』という漢字には、『口』という形をした『穴』が2つある。つまり、人を呪えばその災いは倍になって自分のもとに返ってくる、と。
 漢字については偶然が呼んだ戒めだろうが、よく言われる話ではある。

「まぁ呪詛返しされても、もちろん僕はそのを避ける術(すべ)を知っていますけど」

(じゃあ、関係ないじゃないですかッ)

 淡々と言う七条に、いよいよ啓太の背筋は凍った。が ――――

 

「それでも、ね」

 

 七条の声のトーンが、急に柔らかくなって。

 

「僕にとっての『災い』は、決して避けられないんです」

 

 ―――― だから、僕は。人を呪おうとは、決して思わないんですよ。

 

 七条は言って、少しだけ瞳を細めた。

 

 

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

 

 

「七条、さん ‥‥‥?」

 そんな変化に戸惑う啓太を、ぐいと引き寄せて七条は続ける。

「君は優しいから。僕がそんなことをしたら、 君は“あの人”の心配をするでしょう?」

 

 啓太は、少し逡巡した。
 あくまでイメージの問題だが、あの人 ―――― 生徒会副会長の場合、呪い云々でどうにかなるような人ではなさそうではある。
 けれど、いくら天下無敵にみえるあの副会長とはいえ、相手が『呪い』では太刀打ちできるかどうか、甚だ疑問だ。そうなると、やっぱり心配にはなる。

 というより、予測できないことへの不安のようなものがどうしても残ってしまうのだ。

「そりゃあ、まぁ ‥‥‥」

 小さな声で曖昧に啓太が応えると、「そうでしょう」と七条は確かめるように言う。

 

 啓太は苦笑した。それは別に、優しさから導き出された返事ではない。優しさ云々を持ち出さなくても、それは当然の反応と思うから。
 満面でそれを表す啓太に、七条はうっすらと苦笑いを浮かべた。

 

「‥‥‥ それが、イヤなんですよ」

「え」

 

 そう言って、啓太を自らの胸元に押し込むように抱きしめた。完全にその笑みが消える前に、彼の視界から自分の表情を消してしまうために。

 彼の瞳に映る世界を、自分で埋め尽くすために。

 

「そんな風に、君の心が僕以外の誰かに支配されるなんて」

 

 啓太から、七条の表情は見えない。けれど額や頬に、少しだけ速くなった鼓動やゆっくり上昇し続ける体温を感じることができた。
 それが恋人のものか自分のかどうかまでは、混ざってしまって分からなかったけれど。

 啓太にとっては、どちらでも、よかった。

 

「それだけは、やっぱり僕には耐えられません」

 その言葉尻に仄かに滲んだ嫉妬心も、ぎゅっと啓太を抱きしめる仕草も、何だか子供じみていて。

 

 いつもは、自分とは1つしか年が違わないとは思えないほど大人びた表情を見せる七条。そんな彼の、普段とのギャップについ、可愛いとさえ思ってしまうほど。

「君には、僕のことだけ想ってほしい。わがままですが、 ‥‥‥ いいですね?」

 そっと啓太が顔を上げると、いつもの優しい紫水晶(アメジスト)色の瞳が穏やかに自分の瞳を捉えていた。

 たとえ、悪戯な口唇が降りてきても。
 その背中に、黒い羽が生えていたとしても。

 

 少なくとも、その口からこぼれた言葉だけは、本当の気持ちだと気付いたから。

 

 いろんな意味で、啓太は何だかちょっと嬉しくなってしまう。

 

「大好きですよ、伊藤くん」

 

 それは、魔法の言葉。

 それだけで、この心を捕らえてしまう。

 

 恋の ―――― 魔法。

 

 

 ―――― ENDE ――――    

 

 

 


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